BUGY CRAXONE[~BUGY CRAXONEはなぜこんなにも "ぼくたち わたしたち" の心を焦がすのか~] / IMPERIAL RECORDS

BUGY CRAXONE
IMPERIAL RECORDS / インペリアルレコード

SPECIAL

道産子バンド・BUGY CRAXONEの魅力に迫る 故郷・札幌密着ドキュメント

~BUGY CRAXONEはなぜこんなにも "ぼくたち わたしたち" の心を焦がすのか~

BUGY CRAXONE

北海道札幌市で1997年に結成され、1999年にメジャーデビュー。その後は自主レーベルでのインディーズ活動、メンバーチェンジなど、多くの転機を迎えながらも止まることなく走り続けてきたBUGY CRAXONE。どこかささくれ立ったような攻撃性を持ったバンドはいつしか、すべてを包み込んでくれるような、おおらかであたたかさを奏でるバンドへと変化していった。そして、結成20周年を迎えた今年1月、再びメジャーレーベルに移籍した。

結成からデビューに向け上京するまで、札幌で活動していた期間は決して長かったわけではないが、地元では"道産子バンド"、"札バン(札幌出身バンド)"として、愛され続けてきた。そして今回、結成20周年とニューアルバム『ぼくたち わたしたち』のリリースに伴い、テレビ局、ラジオ局、CDショップなど、地元ならではの強力な応援体制が出来上がっているという。そんな彼らの故郷である札幌の街に「BUGY CRAXONEの魅力とは何か?」、話を訊きに行った。

取材・文 / 冬将軍

「音楽ってすごいな」とあらためて気付かせてくれたのは、BUGY CRAXONEなんです

──HBCラジオ本部 氏家様

僕もこの仕事をはじめて20年なんですよ。ブージーはデビュー直後、当時担当していたキャンペーン番組に出演してもらって、ライブを観に行ったんです。すずきさんがバリバリのロックを小柄なのに身体全体で歌っていて、過呼吸になるんじゃないかというくらいで。その姿に衝撃を受けましたね。パンクっぽい、パティ・スミスっぽい感じ。今はポップ寄りというか、幅広い人たちが聴けるような音楽になりましたけど。女性ヴォーカルであんなに迫力のあるパフォーマンスやるバンドって、なかなかいないですよね。

子どもの頃、親に連れられて細川たかしさんのディナーショーに行ったことがあるんです。テレビやラジオを通してなんとなく聴いていたものを、はじめて目の前で体験して体中が震えました。その感覚をブージーのライブで思い出しましたね。音楽に引き込まれるという感覚。「音楽ってすごいな」とあらためて気付かせてくれたのはBUGY CRAXONEなんです。

バンドだけど、すずきさんの個性によるところ、"道産子の女" の魅力が絶妙

──HBCラジオ「ベストテンほっかいどう」 奥寺様

バンドではあるけど、ヴォーカルのすずきさんの個性によるところ、"道産子の女" の魅力が絶妙ですよね。男の僕から北海道の女性を見るとね、飾らない、たくましい、開拓者精神=フロンティアスピリットを持った人、という印象が強いんです。中島みゆきさん、吉田美和さん……、といった芯の強さを持った女性アーティストが多いですよね。すずきさんも全然飾らなくてね、アーティストとして非常に良いものを持っているなぁ、と感じます。

ブージーはもちろん、怒髪天にしてもthe pillowsにしても、道産子バンドって、どこか凛とした北海道の空気感があるんですよ。サカナクションみたいに一見毛色が違うようなバンドでも、「ああ、っぽいな」というものを感じます。

そうそう、ギターの彼(笈川司)、僕好きなんですよね、ブリティッシュな香りがしてカッコいい。マンチェスターから来た少年、みたいなね。……妖精なんでしたっけ?(笑)。

ブージーはライブを観たら絶対虜になると思いますよ。キレの良い演奏と楽曲、そして言葉をリズムに乗せるのがうまいんだよなぁ。

インディーズ時代と現在のブージーはある種、別の雰囲気を感じてるんです。ただ、共通しているのは、とにかくライブがカッコいいこと

──北海道テレビ放送 夢チカ18 北田様

以前はイベンターにいたんですけど、ちょうど社会人1年生のときに、デビュー当時のBUGY CRAXONEを担当する部署に配属されました。他と馴れ合わずに自分たち独自の世界を持っていて、ロック的なトゲトゲしさを持っているカッコいいバンド、という印象でしたね。インディーズで活動するようになってからもイベンターとして関わったりしてきましたが、テレビ局に入ってからは「少しでも多くの人に見てもらいたい、解ってもらいたい」という気持ちで応援しています。

ニューアルバム『ぼくたち わたしたち』では、やっぱり「シャララ」が好きです。他のバンドやアーティストが歌ったら、絶対にこうはならない。成立しない歌なんじゃないかと思います。

ビクター時代やインディーズ時代と現在のブージーはある種、別の雰囲気を感じてるんです。"赤と青" とでもいうのかな……。ただ、共通しているのは、とにかくライブがカッコいいこと、良い緊張感があってドキドキできることですね。

あたりまえのことを、あたりまえのようにやる。突飛なことではなく、シンプルに丁寧に

──北海道テレビ放送 夢チカ18 三上様

はじめて番組にゲストでいらっしゃったのは、『Good morning, Punk Lovers』(2008年)のときでした。同アルバムの中でも「Come on」という曲がとくに好きだったんですけど、ライブで観たら本当にカッコよくて。もの凄くとんがってるステージで、観てる側もヒリヒリとした緊張感を感じるすごいバンド、というのが強い印象としてありました。

あの頃と比べると、現在のブージーは良い意味で "リスナーとの近さ" みたいなところを感じます。あたりまえのことを、あたりまえのようにやる。突飛なことではなく、シンプルに丁寧に。親近感を覚えさせるバンドは多いとは思うんですけど、その中でもズバ抜けて、"近い" なぁと思います。新しいアルバム『ぼくたち わたしたち』はとくにそれを感じるんですけど、振り返って聴いてみると「Come on」も、デビュー曲「ピストルと天使」も、「近いんだなぁ」と感じますね。そこが変わらない魅力なんですよね。

『ぼくたち わたしたち』は、ふとしたときに思い出して、元気をくれるような曲がいっぱい入ってる

──タワーレコード札幌PIVOT店 吉田様

『ぼくたち わたしたち』は、ふとしたときに思い出して、元気をくれるような曲がいっぱい入ってるアルバムですね。お店では、いかにもなロックファンというより、良い意味で普通の音楽ファンの方々が手に取ってくれている印象があります。北海道出身で、20年続けたバンドで、すごいですよね。11月19日の渋谷クラブクアトロのライブは20周年の集大成になるような素敵なライブになるよう願っています。

普通は「ロックっぽく、カッコよく」っていう風になるじゃないですか。でもそうじゃなくて、湧き上がってくる感情をストレートに表現されていて、心に響いたんです

──タワーレコード札幌PIVOT店 清水様

札バンということで、最初ベストアルバム(『ミラクル』)を聴かせていただいて、インストアライブを見て、それがものすごいよくて。ライブを見て感じたのは、取り繕ってないとでもいうか、自然体でやっているのがすごいなと思ったんです。ロックバンドだと、普通は「ロックっぽく、カッコよく」っていう風になるじゃないですか。でもそうじゃなくて、湧き上がってくる感情を思いっきりストレートに表現されていて、それがものすごく心に響いたんですよね。

地元バンドマンの方々がブージーのTシャツを着ていたり、「愛されてるなぁ」と思います。90年代~00代からのオルタナティブ・ロックの札バンとして孤高の存在でもあり、カッコいいなと思いますね。

「おっ、ブージー頑張ってるな、僕も頑張んなきゃ」と、勝手に一体感みたいなものを感じたりしています

──玉光堂四丁目店店長 有馬様

ブージーとは同世代なんです。デビュー当時、僕も玉光堂に入った頃で。今年3月にライブを拝見して、昔の印象よりもポジティブというか、元気をもらえるような明るいロックになっていて、印象は凄く良かったですね。ライブもアットホームというか、もちろん地元だというのもあったんでしょうけど、とてもいい雰囲気で魅力を感じました。

20周年ということは、自分も20年歳を取ったわけだから。ずっと寄り添ってきたわけではないけど、今回のようにアルバムリリースだったり、ツアーで札幌に帰ってきたり、地元のテレビやラジオに取り上げられたり、そうした節目節目の活躍を見て、「おっ、ブージー頑張ってるな、僕も頑張んなきゃ」と、勝手に一体感みたいなものを感じたりしてますね。一緒に歳を取らせてもらったなぁと。歌詞にしても音にしても良い意味で変わってきているし、そこが自分に共鳴できるところでもありますね。あまりカッコつけてない、ちょっと可愛らしいところも魅力的ですね。

『ぼくたち わたしたち』は "しっかり耳を傾けていく音楽" の入門編にいいんじゃないかとも思うんです。「音楽ってこんなにも心に届いてくるものなんだ」ということを、世代を超えてわかってもらえるんじゃないかと

──札幌テレビ放送「熱列!ホットサンド!」 山谷様

失礼ながら、正直あまり意識してなかったバンドなんですけど、ここ何年かで「あれ? こんなバンドだったけ?」って思ったんです。歌はやっぱり "言葉の強さ" が耳に入るし、僕個人としては難しい言葉や遠回しではなく、ストレートでいいと思っているので、「ブージー、こういうスタイルでこう来るんだ」と、スッと入ってきたのがちょうど、アルバム『Lesson』(2015年)でした。なので、長く聴いてきたみなさんとは違って、遡っていく感じですね。だから「もっと早くからちゃんと聴いておけばよかった」という後悔もあります。

『ぼくたち わたしたち』は僕の中で今年ナンバーワンのアルバムなので、いつも聴いてます。どの曲聴いても元気をもらえるんですよね。やっぱり20年やってきたからこそのアルバムなんだと感じたし。辿れば「ピストルと天使」も同じなんだなとも思ったし。たぶんブージーもすずきさん自身も変わっていなくて、言っていることも音楽も一貫していて。尖っていたものが丸くなった、というんじゃなくて、表現の方法が変わった、ということだと思うんです。

なんとなく聴く音楽もいいとは思いますけど、「この人、何が言いたいんだろう」と、"しっかり耳を傾けていく音楽" も大事だと思うんです。『ぼくたち わたしたち』は、そんな音楽の入門編にいいんじゃないかとも思うんです。「音楽って、こんなにも心に届いてくるものなんだ」ということを、世代を超えてわかってもらえるアルバムなんじゃないかと思っています。

「あっけらかんに生きるのだ」っていう肩肘張らない応援歌を歌えるようになったことが、今のパフォーマンスにつながっている

──STVラジオ プロデューサー 大山様

デビューの頃はカッコつけてたんだよ。カッコつけてた音楽だったし、カッコつけたステージだった。10年前にアマチュアバンドのコンテストのゲストに迎えたことがあって。そのときはもがいてる感じだった。そして、2年前のアルバム『Lesson』で「キタな」と思った。彼らの覚悟と迷いのない道筋を見たような気がした。そして今回の『ぼくたち わたしたち』でさらなる強い思いを感じた。バンドとしての覚悟と方向性をはっきりと見出したアルバムだと思うし、サウンド、アレンジ、歌詞……すべてにおいて、意を決したとでもいうか、迷いのない自信をものすごく感じたんだよ。こないだ新聞のレビューにも書かせてもらったんだけど、「今が充実のとき」っていうね。

昨日のライブ(『COUNTERBLOW 030』10月5日 札幌Bessie Hall) 、まず最初に喋ってからはじめたでしょ? あれは相当な勇気だと思った。でも、それは裏返せば自信なんだよね。数年前のブージーだったら、あのはじまりはやらないよね。ちゃんと前(怒髪天のステージ)を受けて、ああ入ったのは最高だね。

「あっけらかんに生きるのだ」っていう肩肘張らない応援歌を歌えるようになったことが、今あのパフォーマンスにつながっていると思っているから。楽曲の成長とバンドの成長だよね。


「最初はシャイだけど盛り上がるとすごい」とは、多くのバンドマンたちが、北海道のオーディエンスを評してよく口にする言葉だ。“道民性”というものだろうか。今回、取材に協力いただいたみなさまも、最初は謙遜しつつも、語りだすとその熱い想いは止まらなかった。デビュー当時から知る人、近年になって知った人、ブージーとの関わり合い方はそれぞれだが、いちロックファン、音楽ファンとしてBUGY CRAXONEというバンドが好きなんだというのが、ひしひしと伝わってきた。そしてなにより、広大な北の大地だからこそ生まれたこのバンドとその音楽に、大きな誇りを持った同郷愛を感じた。

『ぼくたち わたしたち』に収録されている「シャララ」はHTB北海道テレビ放送の夕方ワイド番組「イチオシ!」にて、毎週金曜日、その週を振り返るニュースコーナーのエンディングテーマとして制作された楽曲である。悲しいニュースもあれば、心あたたまるニュースもある。そんな映像とともに1週間の締めくくりとして、多くの人たちの日常に溶け込みながらBUGY CRAXONEの歌が流れるのだ。

窓をあけて顔あげる そこは空があるだけ
生きることは暮らすこと だから今日も精一杯

──「シャララ」


LIVE REPORT

BUGY CRAXONE 20周年記念ワンマンライブレポート

BUGY CRAXONE20周年ワンマン
"ぼくたち わたしたち" の空間に "ベリナイス" な音楽が鳴り響いた

ライブフォト
撮影:新保勇樹

BUGY CRAXONEが11月19日、渋谷CLUB QUATTROにて『20周年ワンマン "100パーセントナイス!"』を開催した。1997年に北海道札幌市で結成され、1999年にメジャーデビュー。その後自主レーベルでのインディーズ活動、メンバーチェンジなど、紆余曲折ありながらも止まることなく走り続けてきたロックバンドの20年の生き様を、これでもかというくらい見せつけた。

定刻を少し過ぎると、客電が落ち、SEが鳴る。リズムに合わせて頭上高らかにクラップするフロアいっぱいの "ナイスちゃん"(=ファンの総称)がメンバーを盛大に迎え入れる。「元気かー? 楽しんでいこうぜー!」すずきゆきこ(Vo)が叫ぶ、クラップの軽快なリズムを受け継ぎながら、「ハレルヤ」が始まった。後方まで埋まった会場を隅々まで見渡し、満面の笑みを浮かべながらすずき嬉しそうに歌う。そんな彼女を前に、10~20代からメンバーと同世代、そしてもっと上の世代も……幅広いナイスちゃんたちが手をかざし、ともに歌う。「ドアタマからボルテージを上げ、会場は熱気に包まれーー」のようなロックバンドとは異なる、あたたかくて、ほっこりしていて、しあわせ感に溢れた、ブージーらしい空間が広がった。

ライブフォト
撮影:新保勇樹

つづく「花冷え」「ボクを信じて」と軽快なナンバーのあと、「よかったぁー、できたぁー、クアトロー」と思わずこぼれたすずきの声にフロアから暖かい拍手が送られる。「ホントに、ありがとう。ホントに!……まだこの後なげーから(笑)」鳴り止まぬ拍手と捲き起こる "ブージー!" コールを照れくさそうに制すると、「WAHTCH YOUR STEP」へ。先ほどまでとは打って変ってキレのあるリズムにクールなヴォーカルが映えるパンキッシュなナンバー。この緩急のついた振り幅もブージーの魅力だ。

すずきの叩きつける感情と洪水のようなバンドアンサンブルが襲う「悲しみの果て」、鋭い刃のような切れ味を見せる「Come on」、かと思えばキャッチーなメロディとリズム、すずきが指をクイッとフロアを煽り皆大声で歌った「なんとなく Be happy」、次から次へと繰り出す珠玉の楽曲と演奏の幅にバンドの懐のどデカさを見た。

ライブフォト
撮影:新保勇樹

サウンドも、グルーヴも、とにかく図太い。一切の迷いのないリズムでアンサンブルを司っていくヤマダヨウイチ(Dr)と地を這うように重く、大きくうねりをあげる旭司(Ba)。笈川司(Gt)のギターは歪んでいないのに、ときに豪快に音の壁を作り、ときに繊細に楽曲に彩りを与えていく。特別音がデカいバンドではないし、音数の多いバンドでもない。ましてやカラフルなサウンドメイクを使い分けるわけでもない。綿密に構築されたアレンジとフレーズだけで、さまざまな表情を見せていくのだ。

中盤、淡々と刻まれるヤマダのリズムにどよめきが起こる。デビュー曲「ピストルと天使」だ。ヒリヒリとした焦燥感が胸をえぐるような楽曲は、現在のブージーが、現在のすずきが歌っても、あのときのままだった。当時に思いを馳せた人も少なくはなかったはず。そんな感傷に浸ってみるもつかの間、最新アルバム曲「シャララ」ですぐにその気持ちを払拭してくる。その様がいかにもブージーらしい。ラストも2ndシングル「罪としずく」で観る者の心に揺さぶりを掛けておいて、「ぼくたち わたしたち」で、あっけらかんと思いっきり感傷をぶっ飛ばしてくれた。

ライブフォト
撮影:新保勇樹

アンコールは「New sunrise」。あの頃のブージーは、すずきゆきこはどこか生き急いでいて、なにもかもがギリギリだったように見えた。だからこそ、この曲が生まれたんだと思う。〈悲しみと失望の間で希望は生まれるんだ〉その歌詞は当時とまったく違う意味になっている気がした。ラストのラストは「枯れた花」。怒涛のアンサンブルとグルーヴ、猛り狂うように歌うすずきが、会場を圧倒した。

「20年より、この1年がとにかく長げぇかった」すずきがそう口にしていたように、開催発表から1年、この日のために駆け抜けてきた。そうした中でのメジャーレーベルへの移籍、なにより2000年の同会場での初ワンマンのリベンジの意味合いもあった。

ライブフォト
撮影:新保勇樹

17年越しの渋谷CLUB QUATTROワンマンは、ステージ上の4人と会場を埋め尽くしたナイスちゃんたちの思い、"ぼくたち わたしたち" の空間に "ベリナイス" な音楽が鳴り響き、大盛況で幕を閉じた。

「この20周年が終わると、また来月からいつもの調子の、……でも、今日を経たことで、抜群にカッコイイ! と思うんだよね、ヘヘヘ(笑)」

柔らかい言葉の中に感じる強い意志、これがすずきゆきこであり、BUGY CRAXONEである。この20年のバンドの変化をどう捉えるかは人それぞれであると思う。ただこれだけは言える、BUGY CRAXONEは昔も今も、そしてこれからもずっとカッコイイんだ。

text by 冬将軍